美作市ホーチミン像に世界のベトナム難民団体が抗議

【過去記事】
美作市のホーチミン像問題 
【続報】美作市ホーチミン空間問題

 これまでも当ブログでお伝えしてきましたが、昨年11月に美作市が同市の作東文化芸術センターに設置した『ベトナム・ホーチミン空間』に対し、地元の美作市民と共に、世界中のベトナム系市民団体も反対の声を上げています。

 既に美作市民の間では展示の中止を求める署名運動が行われ、およそ2,000名分の署名が市に提出され、市議会でも複数の市議が展示に反対したと聞きおよびます。地方都市である美作市の人口を考えれば、2,000という数字は決して少なくはないでしょう。また市議の先生のお話では、美作市民の大多数はこのホーチミン空間に反対、もしくは無関心であり、積極的に設置に賛成している市民はほとんどいないとの事でした。しかしその民意は萩原市長には届かず、市民の税金を使ってホーチミン空間の設置が強行されます。

 その後、この事実はネットニュースで世界中に拡散し、ホーチミンの行ったテロや戦争、戦後のベトナム政府の暴政によって苦しめられた人々に深い悲しみと憤りをもたらす結果となりました。
 まず米国在住のベトナム難民コミュニティ『自由ベトナム人連盟(Liên Mạng Người Việt Tự Do)』が、2017年12月29日付けで美作市に対し、抗議とホーチミン空間の撤去を求める請願書を提出しました。

SBTN: Liên Mạng Người Việt Tự Do gửi kháng thư yêu cầu dỡ bỏ tượng Hồ Chí Minh ở Nhật
https://www.sbtn.tv/lien-mang-nguoi-viet-tu-do-gui-khang-thu-yeu-cau-do-bo-tuong-ho-chi-minh-o-nhat/

 そして2018年1月からは、展示の撤去を求める世界規模の署名運動が開始され、4月までに日本国内外合わせて8,000名を超える署名が寄せられています。

Protest against installing the statue of Ho Chi Minh at Mimasaka, Japan
Yêu Cầu Xóa Bỏ Biểu Tượng Hồ Chí Minh Trong Viện Bảo Tàng Sakuto, Thành Phố Mimasaka

 この署名運動の中で、世界各地のベトナム系市民からは以下のような声が多数寄せられています。

「なぜあのような残虐な独裁者が日本で崇拝されるのか?日本は民主主義国家ではなかったのか?」

「ホーチミンは美術館ではなく、ハーグで戦犯裁判にかけられるべき人物です」

 そして2018年4月6日、日本在住ベトナム人協会の有志、およびドイツ、カナダ在住ベトナム難民協会の代表者が、世界のベトナム系市民を代表し、抗議のため美作市を訪問しました。私、森泉も代表団に同行し、抗議に参加させて頂きました。

問題のホーチミン空間が設置されている作東文化芸術センター前にて
(写真: 日本在住ベトナム人協会)

(写真: 日本在住ベトナム人協会)

 その後、代表団は美作市役所を訪れて萩原市長と約1時間会談を行い、ホーチミン空間の撤去を求める請願書を約8,000名分の署名と共に正式に提出しました。

(撮影: 日本在住ベトナム人協会)

<後列中央左>
美作市市長 萩原誠司氏 
<後列中央右>
カトリック教会神戸地区 カオ・ソン・タン神父
<前列左から>
ドイツ在住ベトナム難民協会会長・ベトナム難民グローバルネットワーク会員 ホアン・ティ・ミ・ラン医師
日本在住ベトナム人協会会長 グエン・フォン・カイン氏
在日本ベトナム革新党支部代表 ボー・ハー・アイン氏
ベトナムウォッチ筆者 森泉大河
(写真: 日本在住ベトナム人協会)


代表団から請願を受けた萩原市長の返答を要約すると以下の内容になります。
  • ホーチミン空間の設置はあくまでベトナムと日本の友好の為のものであり、撤去する考えはない
  • ホーチミン像は美作市以外にも、フランスやオーストリアにも設置されている
  • ユネスコもホーチミン主席を顕彰する決議を発表している
  • ベトナム難民の苦難は理解するが、過去の遺恨を乗り越え未来志向になるべき
 この中でオーストリア・ウィーンのホーチミン像については、萩原市長の認識に誤解があったので、代表団から指摘がありました。確かに2017年、ウィーン市においてホーチミン像の設置計画が持ち上がりましたが、この計画はドイツやアメリカ在住のベトナム難民コミュニティー、およびオーストリア・ドイツ国内の人権団体からの強い反対を受けてウィーン市も方針を改め、像の設置計画は昨年2月に中止となっています。

Việt Báo Daily Online: Tiến Trình Chống Dự Án Dựng Tượng HCM tại Vienna

 また過去の遺恨を乗り越えるよう促した件では、萩原市長は「日本も第2次大戦においてアメリカによる空襲や原爆投下など悲惨な経験をしたが、戦後日本人はルーズベルトを恨むことなく未来のために行動した」と、戦後の日本を引き合いに出し、過去に拘る事は未来のためにならないとし、代表団に対して考えを改めるよう求めました。
 目の前でそれを聞いていた私や、他の代表団のメンバーは、率直に言って萩原市長のこの発言に憤りを覚えました。萩原市長は今回のベトナム人による抗議・請願を、「ベトナム・日本の友好を阻害するもの」と捉えておられるようです。これは、市長の考える友好と、一般的な意味での国際友好とでは、その主体が全く異なるために出たお考えではないかと思われます。つまり、市長の仰る「友好」とは、美作市(というより萩原市長一人)とベトナム政府・大使館との友好を指しており、そこに住む一般の美作市民やベトナム人は含まれていないのではないでしょうか。

 今回私はベトナム難民団体に協力する立場の人間として抗議に同行させて頂きましたが、それとは関係なしに、一般の日本国民の目線で見ても、このホーチミン空間の設置は美作市民にとっても、日本国民にとっても何の得もありません
 私は実際に美作市を訪れてみて、豊かな自然と歴史が息づく本当に美しい街だと思いました。出来ればこんな事ではなく、観光で訪れたかったです。そのような街に、なぜ世界的に評価が大きく分かれ、いまだに多くの人々が憎しみを抱いている外国の政治家の銅像が必要なのでしょうか?いったい誰が得をするのでしょうか?
 市民の与り知らぬところで計画が進み、郷里の名が不名誉な形で世界に注目されているのですから、もしこれが自分の住む街であったなら、迷惑この上ありません。それは日本中どこの自治体でも同じだと思います。また広い視野で見れば、これは美作市のみならず、日本全体にとっても百害あって一利なしの常軌を逸した事態だと考えます。

 美作市民および美作市議会の皆様におかれましては、突然このような国際問題の渦中に置かれさぞ困惑されているかとお察ししますが、御市の名誉の為にも、なにとぞホーチミン空間の撤去に向けたご協力をお願い申し上げます。

コメント

このブログの人気の投稿

テレサ・チャン弁護士来日

良心の囚人に捧げるクリスマス・チャリティー

美作市のホーチミン像問題