グエン・ベト・ズン逮捕

※この記事は別ブログに2015年04月22日に投稿した記事の改訂版です。

昨晩、ベトナムで民主化運動をしているブロガーで、私の友人でもあるグエン・ベト・ズン(Nguyễn Viết Dũng)と、彼の仲間4名がハノイ市内で逮捕されていたというニュースが届きました。

Saigon Broadcasting Television Network (SBTN)
http://www.sbtn.tv/vi/tin-viet-nam/blogger-dung-phi-ho-bi-bat-khan-cap-vi-gay-roi-trat-tu-cong-cong.html
http://sbtn.tv/vi/tin-viet-nam/ca-quan-hoan-kiem-bat-giu-nguyen-viet-dung-trai-phap-luat.html


 ベトナム・ゲアン省在住のグエン・ベト・ズン(Facebook名 Dũng Phi Hổ)は、Facebook上で僕の事を知り、日本人がベトナムの歴史に興味を持っていることをとても喜んでくれて、僕に自分達の活動を紹介してきた事から友達になりました。後で知ったのですが、彼は僕と同い年の28歳で、しかも誕生日も僕と一日違いという事で、なにか運命めいた物を感じました。そして彼は、僕を民主化運動Facebookページの編集者の一人にまで任命してくれました。(僕はベトナム語が書けないので一度も自分から記事を投稿する事は無かったけど)
 ベトナムでは、ズンたち民主化勢力はまだまだ無力な存在であり、警察だけでなく共産党政権を妄信する人々からも『反動』のレッテルを貼られ、毎日のように嫌がらせを受けています。それでも自らの信念を曲げずベトナムの未来の為に頑張る彼らを、僕は心から尊敬するようになりました。
 
 しかし先週、事件が起こりました。ズンと仲間らは4月12日午前11時30分、ハノイで行われた街路樹保護を訴えるデモ※に参加していたところを、ハノイ市ホァンキェム警察署によって緊急逮捕されました。罪状は、ベトナム社会主義共和国刑法第245条に基づく『破壊活動』と『公共秩序騒乱罪 (gấy rối trật tự công cộng)』

※現在ハノイ市内では約6700本の街路樹の伐採が進められ、長年愛された美しい景観が失われつつある。行政当局は都市開発の為の植え替えと説明しているが、街路樹に使われている樹木は現在では希少な品種であり、伐採されたこれらの街路樹は材木として売られ高値で取引されている。この事から「当局は財政難を補填すべく、最初から材木として売却する目的で百年以上の歴史がある街路樹を伐採している」と市民らが抗議の声を上げていた。

 しかし他のデモ参加者は、ズンたちは道端の屋台で休んでいるところを警察官に連行されたと証言しており、破壊活動があったなどと信じる者は誰もいません。ズンらは逮捕当時、ベトナム共和国の国章と、英語で『我々国民は政府を恐れない。政府が国民を恐れているのだ』と書かれてた服を着ており、それが直接の逮捕理由となったようです。しかし刑法上それらは公共秩序騒乱罪に該当する行為ではなく、起訴が困難と分かると、ホァンキェム警察署はなんとしてもズンを有罪にするため罪状を二転三転させ、彼を無理やり犯罪者に仕立て上げようとしています。そしてハノイ警察は4月20日、ズンの逮捕理由を『精神障害』として公式に発表しました。

 ズンは過去に何度も政府への抗議活動によって警察に逮捕されていますが、彼は法律に詳しいため違法行為を避けており、これまでは起訴されることなくすぐに釈放されていました。しかし今回は逮捕・拘留されてからすでに十日が経っており、ズンの家族は違法逮捕だとしてズンが拘留されているホァンキェム警察署への抗議を続けています。また警察がズンの家族へ逮捕の告知を行ったのは実際に逮捕されてから1週間後の4月19日であり、本来すぐに公にされるはずの逮捕の事実が隠蔽されていた事も違法行為にあたると家族は主張してます。
 昨日4月21日、タイグエン省に住むズンの妹グエン・ティー・ジュ・アン(Nguyễn Thị Diệu Ánh)さんも、兄の解放を求めてハノイに赴きました。アンさんはホァンキェム警察署に対し、兄が拘留されている理由を明確にするよう繰り返し求めましたが、警察側は「現在捜査中だ」として説明を拒否しました。

SBTNのインタビューに対し、アンさんは以下のように語っています。
『私はズン兄さんが生きているのか死んでいるのか、生きているなら健康なのかこの目で確かめたくてホァンキェム警察署に行きました。しかし警察は、捜査の過程で家族の面会は許されないと言うだけで、彼の安否すら教えてくれませんでした。さらに警察は私に、「兄さんのために今から貯金しておくんだな。これから沢山金がかかるからな」と言いました。』

ズンの母親も息子の安否を心配しています。
『ズンは逮捕されて9日も経つのに、なんでまだ釈放されないの?逮捕通知の罪状は公共秩序騒乱罪のみで、ホァンキェム警察署はその罪で起訴しない事を決定しているのよ。じゃあなぜ9日間も拘留しているの?警察の行動は法に背いているわ』

 現在ズンの家族は、彼を保護し権利を護るための弁護士を探しており、ズンが釈放されるまで政府への請願を続けるとしています。またFacebookで活動するベトナム民主化運動グループは、ズンを釈放するようホァンキェム警察署に最後通牒をつきつけ、もしズンが釈放されなければベトナム全土の都市で、国民に反政府デモを呼びかけるとしています。

 悔しいことに、僕がこの事態を知ったのは、逮捕から9日経った昨晩の事でした。今思えば、逮捕されたちょうどその頃、彼のアカウントやFacebookページが突然削除されたりしておかしいとは感じていたのですが、僕は時間をかけて翻訳作業しない限りベトナム語を読むことが出来ないので、事態を把握できていませんでした。ズンの逮捕は毎度の事なので本人も慣れたものだったと思いますが、今回は罪状も確定しないまま長期間拘留されるという異常事態に陥っており、法を無視してまで民主派を弾圧するベトナム共産党政権の姿勢にベトナム国内外のメディアや著名人も怒りの声を上げています。

 ベトナム警察はいまだに容疑者、特に民主派や少数民族等の政治犯への取調べにおいて、日常的に拷問を行っていると言われています。正直今回はズンもタダでは済まないかも知れない・・・。今はただ彼らが無事に帰ってくることを祈るしかありませんが、無力な自分が悔しいです。そして、改めてベトナム共産党という独裁政権の非道さと、それに支配されるベトナム国民の苦難に心を痛めています。

 私は今後も、ズンたち民主派と、ベトナムという国の現実を記事にして日本にお伝えする事で、微力ながら彼らを応援していきたいと思います。

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