ベトナムの若者に聞く その2

※この記事は別ブログに2015年04月13日に投稿した記事の改訂版です。

昨日は統一地方選挙でした。うちの地元は県議会議員選でしたが、僕が投票した候補者は落選しちゃいました。残念。しかし結果はともあれ、社会主義ベトナムに暮らす人々から話を聞いていると、ただ『(政権交代可能な)選挙がある』、『言論の自由がある』という事が、どれだけ恵まれた事なのか思い起こされます。

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『ベトナムの若者に聞く』



Tさん(サイゴン在住・26歳女性)

 あなたも知っているように、ベトナムの学校ではベトナム共和国について何も教えないし、言及する場合でも教師はベトナム共和国を悪としてしか教えないよ。私はベトナム共和国について父から教わったの。私も子供だった頃は、学校で教わった事を信じて共産党を称えるだけで、父の話など気にも留めなかった。馬鹿だったわ・・・。でも今になって、インターネットで様々なニュースを読むことができ、初めて共産党の恐ろしさに気付かされたの。だから私は父に共和国時代についていろいろ聞く事ができた。でも、私のベトナム共和国に対する考えを友達に話すことは出来ない。一度それを口にすれば、彼らは私を『反動』と見なすから。
 ねえ、『赤色歌(Nhạc Đỏ)』って聞いた事ある?私にとってこの手の音楽は聞くに堪えないけど、学生の頃は何度も聞かざるを得なかったの。もちろん私達は、これが中国共産党に倣ったベトナム共産党の独裁の手段だと知ってるわよ。私達は1975年以前のベトナム共和国時代の歌(イエローミュージック)を所持する事すら許されない。だから私はYoutubeでアジア・センター(※)の音楽を聴いてるの。本当はCDが欲しいんだけど、アジア・センターの音楽は政府が許可しないから・・・。(※アジア・センター:アメリカのベトナム移民系レコード会社)
 君は『名もなき戦士(Chiến Sĩ Vô Danh)』を歌えるんだよね?暗黒の日(サイゴン陥落)の歌『最後の命令(Quân lệnh cuối cùng)』は歌える?あと是非この『祖国に捧ぐ(Một chút quà cho quê hương)』の歌詞も知って欲しいな。私たちの哀れなベトナム共和国を想う、悲しくも美しいこの歌の意味が分かれば、なぜ私達が4月30日に涙するのか分かるよ。
 今年の4月は、共産党がずっとテレビで戦争の勝利を祝う番組ばかり流してるよ・・・。かつてグエン・バン・チュー総統は言ったの、『越共の口車に乗るな、彼らが何をしたかを見ろ』と。彼の言葉は正しかったわね。私には北部出身の友達がいるけど、彼女は私がフェイスブックで『愛国日記(※)』のページにいいね!してるのを知って、なぜ私がそんな事したか聞いてきたの。そして「彼らは反動だから気をつけて」とアドバイスしてきたわ。彼女はHCM(ホー・チ・ミン)を崇拝し、4月30日を『解放の日』と呼んでいるの。今はインターネットが普及しているのに、何故いまだに政府の嘘に気付かないのかしら・・・。(※愛国日記(Nhật ký yêu nước):表現の自由を求めるベトナムの市民団体)
 知ってる?ベトナムではテト休暇中、全ての家庭にホー(ホー・チ・ミンの事)の肖像を飾って彼を崇める事を義務付けられているの。だから私が実家に戻った時も、両親は仕方なく肖像を買わざるを得なかった。だけど、私のお姉ちゃんはその肖像を破いて燃やしちゃったの(笑) 私達は、なんでホーなんかを崇拝しなくてはならないんだって本当に怒ってるわ。共産党はこう言うの。「全てのベトナム国民は同志ホー・チ・ミンを愛している。その証拠に、全ての家庭に肖像が掲げられている」。本当に越共だけは言いたい放題だわ。


Dさん(サイゴン出身・20代男性)

 レッズ(※)の連中は子供の頃から劣悪な環境と共産党の洗脳の中で育ってきたんだから、野蛮な彼らを教育したり、改心させるのは難しいよ・・・。越共はまさに、外の世界を知らないジャングルの未開人のようなものさ。共産党が作った嘘と幻想の世界に住んでいるんだから。
 ベトナム共産党の独裁はいつか必ず終わりを迎えるだろう。しかし残念ながら、我々ベトナム人の意識は日本人や韓国人ほど高くはないんだ。それがこの国に80年間も共産主義をのさばらせてしまった要因の一つだね。今では国民全体が臆病者と化し、政府に怯えながら暮らしているよ。さらに、ベトナム共産党が中国共産党の制御下にある以上、5年以内に政治体制が変わらない場合、ベトナムは第二のチベットや内モンゴルと化す危機に直面すると思うよ。私はベトナム人の多くが無関心や臆病者であることが本当に悲しい。我々の民族、我々の国が、この問題を自分自身で解決するのは難しいのだろうか・・・

※レッズ(Reds):ベトナムの青年共産主義者グループ。政府の黙認の下、反動と見なした市民をリンチするなどのテロルを行っている


Lさん(ハノイ在住・22歳男性)

 ベトナムには大勢の良い人がいるけど、それと同じくらい悪い人もいるんだ。でも他の人間が何をしようと、自分がどう生きるかは自分で選ぶ事なんだよね。僕はベトナムの首都ハノイに住んでいるし、レッズと同じように共産党の『独裁教育』を受けて育ってきた。でも、僕は彼らとは違う。この国にはまだ、政府とは違う価値観を尊重する人々が居るんだ。信じてタイガ。いつの日かベトナムは変わるから!
 ねえタイガ、僕も歴史が大好きなんだ。だからより良く、幅広い視点で近代史を学ぶために、日本の大学に留学しようと思ってるんだ。君も知っているように、ベトナムの歴史教育は酷いものさ。それらは全て、いかに共産党が素晴らしく、資本主義が悪かを説くばかりなんだ。僕はベトナムのこのやり方を変えたいから、歴史教育においける外国との違いや良い部分を学びたい。だから日本の大学で、ベトナム人留学生に良い学校を教えてくれないかい?日本はベトナムよりはるかに自由な国だから、そこで教えられる歴史も良い物だと信じているよ!今はその為の勉強と貯金をしている最中だけど、どの大学を選べばいいか情報がなかったんだ。もし外国人向けの学校がなくても、僕は出来る限り日本語を勉強して、他の日本人と同じように受験するよ。
 ほとんどのベトナム人にとって、ベトナム共和国時代の真実を知ることは、同時に自国(社会主義ベトナム)の暗部を蒸し返す不都合な行為なんだ。でも僕はそれを変えたい。少しでもベトナムを良くする希望があるのならば、出来る限り努力したいんだ。僕はベトナム人の考える事が分かっているから、もし本当の歴史を広めることが出来れば、人々の考えを変える事が出来ると思うんだ。僕には、そのために戦う手段が必要なんだ。ただしそれは、共産党と戦ったり、反共主義者になるという意味ではないよ。彼らを追い出すのではなく、彼らを変えなくてはならないんだ。そうすることで、僕たちベトナム人は過去の遺恨を乗り越え共存できるようになる。どちらか一方の正義を押し付けるのではなく、様々な価値観を認め合う方が良い。大局的な視点で、『合理的な嘘つき』になる必要があるんだ。
 日本は自由な国だよね。日本はベトナム共産党政府を支持しているけど、それは遠く離れた国だから害を受けず自由で居られるんだよ。この国に住んでいると独裁政権の害悪から逃れようもないんだ。だからこれを変えなくてはならないし、そのためには多くの知識が要る。だから僕はそのための手段を見つけたいんだ。



【あとがき】
 このブログでは定期的にベトナム共産党を非難していますが、僕は決して反共イデオロギストという訳ではありません。現在のベトナムは中国・北朝鮮と同様、ナショナリズムを拠り所とする単なる一党独裁国家であり、もはや共産主義ですらないし。日本国内に対しては、浅はかなナショナリズムやレイシズムに溺れる保守・右派を本気で非難していますし。
 僕はただ、世界中の誰も耳を傾けようとしない、自由を求める彼らの声をより多くの人に知ってもらいたいだけです。外国人が口出すのはとんだお節介かも知れませんが、ベトナム国内では厳しい情報統制が敷かれているので、彼らはむしろ外国に向けて積極的に情報発信したがっています。なので、とことんお節介焼かせてもらいます。その分レッズの間でも有名になってしまったので、危なくてベトナムに行けなくなってしまったけど。

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