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メー・ナム解放 米国へ亡命

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昨日、『メー・ナム(マザー・マッシュルーム)』の愛称で知らるグエン・ゴック・ニュー・クイン氏が昨日2018年10月17日に刑務所から釈放され、そのまま政治亡命のため家族と共にアメリカに旅立った事が明らかとなりました。

アメリカ行きの機内で2年ぶりに我が子との対面を果たしたクイン氏 写真: Dân Làm Báo
 ベトナムの著名な人権・社会問題ブロガーで、二児の母でもあるクイン氏は2016年10月、『反国家宣伝』の容疑でベトナム警察によって逮捕・訴追されます。そして2017年6月には裁判所より禁錮10年という常軌を逸した判決が言い渡され、その後1年以上に渡って不当に投獄されていました。(過去記事『近年最悪の言論弾圧: 人権ブロガーに禁錮10年』参照)
 今回クイン氏が刑期を8年残して釈放そして亡命に至った背景として、クイン氏を支援してきたベトナムブロガーネットワーク(MLBVN)は二つの要因を挙げています。  一つはMLBVNメンバーおよび世界のベトナム人権組織が国連人権理事会や各国の人権機関に働きかけた事により、世界的にクイン氏の事件に注目が集まり、ベトナム政府に対し国際的な圧力が高まったこと。  そしてもう一つが、アメリカが中国の実質的な衛星国であるベトナムの人権問題に介入する事で、同じく民主化や人権問題を不安定要素として抱える中国に対して揺さぶりをかける意図があったと論じています。アメリカ国務省はクイン氏逮捕後の2017年3月にクイン氏に「世界の勇気ある女性賞」を送るなど当初からクイン氏の事件に注目しており、さらに昨今アメリカと中国の貿易摩擦が深刻化した事で、アメリカ政府はクイン氏の亡命受け入れを早々に決定しました。  またベトナム政府としても、国内にいる限り民主化運動の精神的なシンボルになりかねないクイン氏のような人物を、亡命という形で体よく国外追放する事には積極的でした。
[出典] Dân Làm Báo: Cuộc vận động Tự Do cho Mẹ Nấm - Nguyễn Ngọc Như Quỳnh http://danlambaovn.blogspot.com/2018/10/cuoc-van-ong-tu-do-cho-me-nam-nguyen.html

ヒューマンライツウォッチ・アジア副所長フィル・ロバートソン氏は今回のクイン氏の釈放と亡…

中秋節2018

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記事にするのが遅くなりましたが、9月23日に都内で開催された日本在住ベトナム人協会が主催する中秋節(テト・チュン・トゥー)のお祭りのお手伝いをさせて頂きました。
 日本でも十五夜・お月見として馴染み深い中秋ですが、ベトナムでは伝統的に子供たちのお祭りとして親しまれており、日本に住むベトナム人コミュニティでも大勢の家族連れが集い、子供たちと一緒に祖国のお祭りを楽しんでおられました。
 ベトナムの中秋節には子供たちがカラフルな五芒星の提灯を手に近所の家々を周って菓子を貰う風習があり、その提灯を親子で一緒に作るのも、中秋節の楽しみの一つとなっているそうです。






 中秋節は夜が本番。日が落ちると、みんなで作った提灯やを手に会場を出て、近くの公園で獅子舞(ムア・ラン・スー・ゾン)が披露されました。獅子舞は春節/元旦節(テト・グエン・タン)のものとばかり思っていましたが、中秋にも行われるのですね!


 私の地元の街には市民祭りはあるものの、私が生まれた時には神輿や獅子舞など伝統的なお祭りは既に廃れてしまっていたので、実際に経験した事がありません。ベトナムにはこの中秋節のように伝統的なお祭りが数多く残っているので、ベトナムの子供たちを羨ましく思います。
 しかし一方で、この日参加した子供たちのほとんどは日本で生まれており、今後も日本で生活していく以上、自分の親以外にベトナムの文化と接する機会はほとんどありません。この日一緒にお祭りに参加した私の友人も、両親はベトナム人ですが、生まれも育ちも日本であるため、中秋のお祭りはこれが初体験だったそうです。
 だからこそ、日本在住ベトナム人協会はこうした催しを通じてベトナムの伝統文化を守り、民族のアイデンティティーと同胞との絆を、日本で生まれ育つ次の世代のベトナム人に受け継ぐ重要な役割を担っているのだと感じました。

ベトナム戦争観

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古森義久「池上彰氏のベトナム戦争論の欠陥」 Yahooニュース/Japan In-depth
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180925-00010000-jindepth-int

 この記事にある池上彰氏に対する批判は至極真っ当かつ、日本ではなかなか取り上げられなかった貴重な意見だと思います。私自身は一応リベラル派なつもりなので、この記事の掲載元である保守系ニュースサイトや著者 古森氏の出身である産経新聞は大嫌いなのですが、それでもこの記事の内容には同意します。また、この記事がYahooニュースという大手メディアに取り上げられた事は私にとっても嬉しい事です。日本人でも、実際に当時ベトナムで取材した人は、本当の事を分かっているんですね。この人も、私と同じ気持ちを40年以上持っていたのだと思います。ジャーナリストの意見にしては、批判の仕方がやけに感情的ですし。
 なお、この記事は池上氏個人の記事に対する批判という形ですが、この池上氏の見解は世の中にはびこるベトナム戦争への誤った認識の典型例に過ぎず、これは池上氏一人がおかしいのではなく、彼が育った日本の言論界全体が長年に渡って空想の世界に浸っていた結果だと私は思います。
 日本を含む先進国の人々の多く(右派・左派ともに)が持つベトナム戦争への歪んだ色眼鏡、つまりアメリカへの劣等感と、「アメリカに立ち向かう解放勢力」への空想じみた憧れを捨てて事実だけを見つめれば、この記事に書いてある事は、あの戦争に対するごく当たり前の認識だと分かるはずです。
 しかし情けない事に、「坑仏」や「坑米」という意図的に単純化された分かりやすくヒロイックなストーリーは、実に多くの人々の思考を停止させる事に成功しています。アメリカへの劣等感(ある意味でアメリカ中心主義)の中に生きる人々は50年以上、ベトナムという国を己の対米感情を肯定するための道具として利用し、歪んだ色眼鏡越しに見る気持ちの良い空想にしがみつき、事実をないがしろにしてきました。
 彼らは幸運にも手にする事の出来た言論と良心の自由をアメリカへの批判に傾ける一方で、ベトナム国民からその自由を奪ったホー・チ・ミンを初めとするベトナム共産党に対しては英雄視を続けてきました。彼らは、自分たちさえ自由なら、ベトナムや他の国の国民の自由な…

良心の囚人の解放を求めるハンガーストライキ

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現在ベトナムでは165名もの善良な市民が、民主化運動や人権擁護、環境問題への抗議、役人の不正・汚職の告発などの市民運動に関わっただけでベトナム政府=ベトナム共産党独裁政権から『社会の秩序を乱し国家転覆を企てた』として逮捕され、政治犯として刑務所に投獄されています。
 彼らは皆、家族や社会、そして祖国ベトナムの未来を思って権力の横暴に抵抗した『良心の囚人』です。しかしベトナム政府は、そうした運動に関わった人々を次々と犯罪者にでっち上げて拘束しています。そして彼らは弁護士との相談も、家族との面会も許されず、公安による厳しい取り調べの末、数年から十数年の懲役刑に処されています。

[関連記事]
良心の囚人
グエン・ベト・ズン裁判
近年最悪の言論弾圧: 人権ブロガーに禁錮10年

[関連リンク]
Vietnamese Political Prisoner Database
ヒューマン・ライツ・ウォッチによる安倍総理への書簡「ベトナムの人権問題について」

 この熾烈な弾圧の中で、ブログで政府批判を行ったというだけで懲役16年の刑を宣告され投獄されているトラン・フイン・ズイ・トゥック氏(51歳)は現在、自身にできる政府への最後の抗議として、獄中でハンガーストライキ(断食)を始め、すでに2ヶ月目に突入しています。

[9月17日追記]
トゥック氏を支援するFacebookページにて、トゥック氏は断食開始から33日経った9月16日、家族や支援者の説得を受け断食を終了したと発表がありました。

トラン・フイン・ズイ・トゥック氏
この命をかけた抗議はベトナム国内外の多くのベトナム人の心を打ち、トゥック氏への支持と、彼の即時釈放を求める運動がFacebookを通じて世界中で実施されています。

写真: VOA / Facebook
トゥック氏の顔をプリントしたTシャツを着て政治犯の釈放を求めるハノイ在住のブロガーら 写真: VOA / Le Hoang / Facebook
 そしてここ日本でも、技能実習生や留学生、元ボートピープルなど大勢の在日ベトナム人がトゥック氏、そして160名を超える良心の囚人たちの釈放を求め、国会議事堂および東京都庁前にて72時間(9月13日~16日まで)のハンガーストライキを実行しています。
 この運動を実施してるベトナム人愛国者一同及びベトナム革新党は、「私たちは、この事実(政…

ナンシー・グエン氏、テレサ・チャン氏来日

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去る8月11・12日、毎年恒例となっている日本在住ベトナム人協会主催のサマーキャンプが静岡県御殿場市で開催されました。キャンプには日本各地から100名を超える在日ベトナム人が集まり、普段離れて暮らす同胞たちとの親睦と絆を深める素晴らしい会となりました。

写真:日本在住ベトナム人協会
2017年のサマーキャンプの記事はこちら

 また今回のキャンプにはスペシャルゲストとして、ベトナムの人権問題と民主化を世界に訴える運動を牽引している著名な活動家ナンシー・ハン・ヴィ・グエン氏とテレサ・チャン・キウ・ゴック氏の両名が参加されました。

テレサ・チャン・キウ・ゴック氏 (写真: Teresa Trần Kiều Ngọc / Facebook)
 テレサ・チャン・キウ・ゴック氏(以下、テレサ先生)は生後間もなく家族に連れられオーストラリアに移住した元ベトナム難民で、現在はオーストラリアで弁護士として活躍されています。テレサ先生が来日するのはこれが二度目で、一回目の来日では日本在住ベトナム人コミュニティからの招待を受け、2018年4月に東京・姫路・大阪の三都市で講演会を開催されました。(過去記事『テレサ・チャン弁護士来日』参照)
 私はこの中の東京講演を取材しており、講演会終了後の打ち上げにも同行させて頂きました。するとその席でテレサ先生本人から、姫路講演までの数日間日本を観光するので同行してくれないかとご依頼いただきました。私はテレサ先生のような世界的な著名人からこのようなお誘いを頂いた事に恐縮しつつも、運転手兼通訳として後日富士山や日光への観光に同行させて頂きました。
 そして今回、テレサ先生は所用でサマーキャンプに先行して来日されるとの事で、私は再び車の運転と案内役を依頼ご頂いたので、キャンプの3日前から日本国内の所用に同行してお手伝いをさせて頂きました。


ナンシー・ハン・ヴィ・グエン氏 (写真: Nancy Hanh Vy Nguyen / Facebook)
 ナンシー・ハン・ヴィ・グエン氏(以下、ナンシー氏)はアメリカ在住のベトナム民主化活動家です。ナンシー氏は2016年5月、当時ベトナムで深刻化していたフォルモサ海洋汚染問題への抗議デモに参加する為サイゴンを訪れた際、宿泊先のホテルで突如ベトナム警察に拘束・監禁された事で世界の注目を集めました。その後、たまたまオ…

東進の英雄記念碑

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2018年8月5日、東京世田谷区の豪徳寺にて『東進の英雄』記念碑建立式が執り行われました。


『東進(Đông Tiến)』とは、共産主義政権からベトナム国民を解放する事を目指し、世界中のベトナム難民で構成されたベトタン(ベトナム革新党)のメンバーが1980年代初頭にラオス領内で開始した抵抗運動を指します。
 当時のベトタンの指導者ホアン・コー・ミン(元ベトナム共和国海軍准将)率いるベトナム愛国軍統一戦線はタイを経由してラオスに潜入し、その地で秘密ラジオ放送『自由ベトナムの声』を放送するなどして、共産主義政権の支配下にあるベトナム国民やベトナム人民軍兵士に政権への抵抗を促しました。また統一戦線はラオス国境を越えてベトナム領内への侵入を図りましたが、1987年にラオス・ベトナム軍の反撃によって多数の死傷者を出し、指導者ホアン・コー・ミンはその地で自決、東進は失敗に終わりました。
 その東進の準備段階において、ベトタン党員は難民として移り住んだ世界各地で活動資金の調達を行っていました。ここ日本では、ベトタンのメンバーは東京の豪徳寺において落ち葉拾いのアルバイトをして活動資金を捻出し、そして彼らはタイを経由してラオスのジャングルへと旅だって行きました。
 その際、日本で彼ら統一戦線の戦士たちの生活を多岐に渡ってお世話したのがアウ・ミン・ユン氏でした。ベトナム共和国出身のユン氏は、ベトナム戦争中に留学生として来日したものの、1975年に首都サイゴンが陥落しベトナム全土がベトナム共産党の支配下に堕ちた事で帰国できなくなり、そのままベトナム難民となって日本に定住しました。以後ユン氏はベトタン日本支部長、日本在住ベトナム人協会会長を務め、祖国ベトナム解放の為の運動に尽力されましたが、一方でその活動の為に共産政権下のベトナムに帰国する事は不可能となりました。そしてユン氏は学生時代に来日して以来、一度も故郷の土を踏むことなく、2017年11月に都内で急逝されました。
 こうした経緯から、ベトタン日本支部はユン氏が先に散った同志たちと共に過ごした豪徳寺に東進の英雄記念碑を建立し、その中にユン氏の遺骨を埋葬しました。 





生前のアウ・ミン・ユン氏と筆者 (2017年7月)
 私がユン氏と初めてお会いしたのは2017年7月にお台場で行われたフォルモサ海洋汚染問題に抗議するハンガーストライキ…

ヒューマンライツウォッチら 首相補佐官にベトナム人権問題への理解を求める

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日本在住ベトナム人権団体 青い海 for Vietnamの発表によると、ヒューマンライツウォッチジャパンおよび青い海の代表団は7月11日、自民党の柴山昌彦衆議院議員と会談し、昨今ベトナムで問題となっている経済特区計画サイバー治安法の問題について説明を行いました。柴山議員は現・内閣総理大臣補佐官、自民党筆頭副幹事長という日本政府の要職にある人物であり、メディアではほとんど報道されていない人権問題に関するベトナム国民の生の声について、日本国民・日本政府が注目するきっかけになればと期待されます。

画像: Aoi Umi for Vietnam / Facebook (https://www.facebook.com/aoiumiforvietnam/posts/1072682302895021)
 会談で代表団は、日本政府はベトナム政府に対し率先してベトナムにおける人権問題と市民の声、法の支配の重要性を強調し、そして日本政府はベトナム政府だけではなくベトナム国民の声に耳を傾ける必要があると訴えました。
 柴山議員はこれに対し、政府に抗議した人々へ加えられている暴力による弾圧と、ベトナム国民が自由を奪われている現状について強い懸念を表明するとともに、ベトナムにおける人権擁護と市民運動をすぐさま支援する旨を代表団に伝えました。
 日本政府はこれまで幾度もヒューマンライツウォッチや青い海からベトナムにおける人権問題の深刻さについて意見を聞き、その都度理解を示してきたものの、現ベトナム政府との協力体制を重視し、具体的な行動に出る事はありませんでした。
 今回、首相補佐官の立場にある柴山議員が公式に支援を表明した事について、青い海は「これは日本の重要なポストにある政治家によってベトナムの人々への支援が行われる最初の、かつ積極的なステップになる」とし、「我々は柴山議員に感謝するとともに、彼の先見性、清廉さを称えるものである」と賛辞を送っています。

 現在、日本政府はベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席を国賓として招待するなど、かつてないほど経済・防衛の面で現ベトナム政府と関係を重視していますが、そのせいで逆にベトナム政府が国民に対して行っている弾圧について見て見ぬふりを続けています。

参考:ヒューマンライツウォッチ 日本:ベトナムに人権尊重を求めるべき
https://www.…